前年の2006(平成18)年の春、センバツ大会で甲子園初勝利を飾った北大津高校は翌年春もセンバツ大会に出場します。
今回はその2007(平成19)年の春、センバツ大会に2年連続で出場した北大津にスポットを当てました。
2007(平成19)年・春 北大津
前年の2006年の春のセンバツで1勝を挙げた北大津でしたが、同年の夏は滋賀県大会初戦で近年急激に力を付けてきた滋賀学園に乱打戦の末敗れ、まさかの初戦敗退。
新チームになって、秋の大会を迎えます。
北大津、センバツへの道
滋賀県秋季大会
夏の大会、初戦で敗退した北大津は新チームになった2006年・秋、センバツに向けて発進します。
1回戦 〇13ー0 彦根西
2回戦 〇7-0 能登川
3回戦 〇2-1滋賀学園
準々決勝〇5-0水口
準決勝 〇5-4八幡商
決勝戦 ●1-2近江
3回戦は夏初戦で敗れた滋賀学園が相手でしたが、延長15回の激戦の末サヨナラホームランで決着を付けて勢いに乗ると、準決勝では夏の代表・八幡商に終盤追い付き、延長10回にサヨナラ勝ち。
決勝戦では翌年の夏に甲子園に出場することになる宿敵・近江に1-2と惜敗しましたが、滋賀県2位で近畿大会にコマを進めました。
近畿大会
近畿大会1回戦の郡山(奈良)戦は6回に大逆転して勝利すると、続く準々決勝の東洋大姫路(兵庫)戦では7回表までに7-2の大量リードするも終盤追い上げられる苦しい展開…。
しかし、7-6の1点差でなんとか逃げ切って、ベスト4!
これでほぼ翌年春のセンバツ出場の当確になり、年が明けた2007年1月26日に正式に出場が決定しました。
1回戦 〇4-2郡山(奈良)
準々決勝〇7-6東洋大姫路(兵庫)
準決勝 ●0-7報徳学園(兵庫)
第79回選抜高校野球大会・北大津
こうして北大津は2007(平成19)年春の第79回選抜高校野球大会に出場します。
大会5日目(3月28日)第1試合で大垣日大(岐阜)と対戦することになりました。
2007年春・北大津の打撃陣
では当時のメンバーをふり返っていきましょう。
北大津といえば打撃のイメージですが、『守備のチーム』というのが当時の評価でした。
秋の大会ではチーム打率.280、3本塁打、12盗塁、22得点・11失点。
1番・センター 宮里裕樹(主将)
前年の春は2番センターで出場。この年はキャプテンになって甲子園に帰ってきました。
秋の打率.444はチームトップ、さらにホームランも1本記録しています。
2番・ショート 浅見佳祐
2年生の守備の要。
打撃面では秋の大会では.167も、甲子園で安打を記録しています。
3番・レフト 松浦 翔
秋の大会.333で5打点、打撃に加えて足も速く4盗塁。
4番・セカンド 石川 駿
秋は.167、1本塁打、5打点、4盗塁。
2年生で4番に座り、この年そして翌年も甲子園で大活躍し、その後は大学ー社会人を経て2014年のドラフト会議で中日ドラゴンズから4順目で指名されている。
5番・ライト 龍田 旬一郎
石川選手や浅見選手と同様、2年生で出場。
確実な打撃にパワーも備える強肩外野手で、翌年は甲子園でホームランも放っています。
秋の大会は.267、1打点
6番・サード 橋本航樹
秋の大会.273 4打点。
これまた2年生です。
7番・ファースト 東山(とうやま)幸次郎
投手ですが打撃も買われてファーストで出場。
秋の大会.304 1本塁打、4打点を記録。
甲子園ではタイムリーヒットも放ち、7回から3番手投手としてマウンドに上ってます。
8番・キャッチャー 山口将介
チームのムードメーカーにして、扇の要。
秋の大会は.290、4打点、2盗塁。
2007年春・北大津の投手陣
投手陣は前年同様、複数の投手がいましたが、秋の大会はおもに2人の投手で勝ち上がってきました。
⑩川島奨平
甲子園では先発しましたね。
左のオーバースローで身長175センチ、カーブが武器の投手で秋は35回2/3で防御率2.29、奪三振22。
⑪河合勇志
秋の大会、川島投手とともに投手陣を支えた2年生投手です。
身長176センチ、右のオーバースローでスライダーが武器のコントロールに定評のある投手でした。
秋は34回2/3で防御率2.08、32奪三振でした。
また打撃も良く、.417、3打点を記録しました。
翌年はエースとして帰ってきます。
①東山幸次郎
1年生の秋から公式戦で登板していて、本来ならエースのはずだったのですが、前年の秋にフォームを崩して不調に陥ってしまい、ほとんど登板がありませんでした。
182センチ、79キロの右の本格派でエースナンバーでしたが、甲子園ではファーストでスタメン出場。
甲子園では打撃で活躍し、試合の終盤7回から甲子園のマウンドで登板しています。
希望枠の大垣日大(岐阜)
大垣日大は当時制定されていた希望枠での出場になりました。
秋の東海大会では準決勝で常葉菊川(静岡)に0-4で敗れていますが、守備が良いという評価でした。
大垣日大はこの時が春夏を通じて初めての甲子園、その後は岐阜県の常連校になっていきます。
希望枠
2003年より制定された枠で、補欠校のうち最も守備の良いチームが選ばれるという特別枠でした。
2008年に廃止され、現在はありません。
阪口慶三監督
かつて東邦(愛知)を春優勝へ導いた名将です。
大垣日大の監督に就任してわずか2年で甲子園初出場に導きました。
当時62歳でした。
その後も同校を幾度も甲子園出場に導き、2023年に春夏連続出場したのを最後に監督を退任されました。
エース 森田貴之
エースの森田貴之投手は1年秋に捕手から投手にコンバート。
140キロの直球にスライダーとカーブ、そしてこの冬に習得したチェンジアップが持ち味です。
秋は78回で防御率0.81、69奪三振。
打撃面でも5番を任され、秋は実に.340、1本塁打、11打点、5盗塁を記録したチームの大黒柱になります。
1番・センター 小川 和也
打撃の巧い、切り込み隊長。
この試合でもいきなり出塁してチャンスを広げました。
3番・レフト 小林 和稔
大垣日大のキャプテンです。
秋の大会は.474、1本塁打、10打点と大当たり。
4番・ファースト 大林 賢哉
秋の大会は.415、1本塁打、そして驚異の17打点です。
この大会ではこの試合の後も大活躍し、この年の夏の甲子園ではホームランも打ってますね。
6番・キャッチャー 箕浦和也
この試合はもちろん、大会を通じて活躍した強肩強打のキャッチャーですね。
このように守備の良いチームを選ぶ希望枠ですが、この大垣日大は非常に強力なチームでした。
大垣日大
チーム防御率0.64(ほぼ森田投手)
チーム打率.366、盗塁数34、失策7
1回戦・北大津vs大垣日大
試合は北大津の継投リレーと、大垣日大の大黒柱・エースの森田投手をどうやって攻略するかがポイントでしたが、試合は思わぬ方向で進んでいきます。
大乱調!北大津投手陣…
試合は初回、北大津の先発・川島投手が先頭打者に四球→牽制悪送球で無死3塁のピンチを迎えると、4番・大林選手のゴロをショートが失策し、ノーヒットで先制点を献上してしまいました。
2回表にも大垣日大に犠牲フライで追加点を奪われると、さらに2死満塁のピンチ。
ここで北大津・宮崎監督は先発の川島投手を諦め、2年生の河合投手にスイッチ。
しかしウォームアップ不足の河合投手は替わりばな2者連続押し出し死球を与えてしまい。
さらに追加点を奪われます。
出しも出したり15四死球
この日、北大津の3人の投手陣が与えた四死球は毎回の15個(四球10、死球5)。
与えたヒットは6本だったけれども、実質20安打打たれたのと同じくらいのダメージでした…。
コレ、1試合でのチーム最多与四死球記録ちゃうけ…??
などと思って調べてみたら、上には上がいましたね(笑)。
選抜高校野球大会における1試合チーム最多与四死球の記録は、昭和10年・嘉義農林って学校の21が最多でした。
どこやそれ…。
ちなみに夏の大会の最多は23だそうです…。
やっぱり打撃の北大津
大会前の評価では打撃が弱いと評されていた北大津でしたが、この試合では大垣日大の好投手・森田投手に計11安打浴びせ、一時はワンサイドゲームになると思われた試合をわりと互角の展開に運んでいけたのが良かったです。
しかも主力打撃陣の大半が2年生ということもあり、当時の筆者は翌年の躍進を期待していました。
サイクル安打目前・石川駿
2年生で4番の石川選手は初回に同点2塁打、第二打席で右方向に3塁打、第3打席にレフト前ヒット、…あとはホームランが出ればサイクル安打でしたが、最終打席はライトフライでした。
後にプロ入りするくらいの選手なので、当時から打撃センスは抜群でした。
この試合では一番目立っていましたね。
甲子園で復活登板・東山選手
3年生も負けていません。
7番・ファーストで出場していた東山(とうやま)選手は2-6で迎えた6回裏、レフトへタイムリー2塁打!
そして直後の7回表にはマウンドに上ります。
前年の秋以降はフォームの改造に苦しみ、調子を崩してしまいほとんど投げていなかったのです。
この試合では3回1失点でした。
スタンドから温かい拍手で迎えられました。
宮里主将も奮起!
前年の春も甲子園で活躍した主将・宮里選手。
この日は犠牲フライを含む2安打。
特に7回表の犠牲フライは4-6と2点差に追い上げる貴重な一打で、後続もヒットで続いたので、「ひょっとして…」などと思ったりもしました。
試合は序盤の北大津の乱調で流れをつかんだ大垣日大が7-4で押し切り、北大津は初戦敗退となりました。
その後の大垣日大
北大津に勝った大垣日大は、その後センバツ大会を勝ち上がり決勝進出!
決勝戦の相手は奇しくも前年の秋、東海大会・準決勝で敗れた常葉菊川(静岡)でした。
東海大会のリベンジには絶好の舞台でしたが、5-6で敗れ準優勝に終わりました。
しかし特別枠(21世紀枠・希望枠)で出場したチームとして最高記録の準優勝でした。
これは今も破られていません。
夏も常葉菊川に…
大垣日大はこの年の夏も甲子園に出場。
春の準優勝から押し上げて、全国制覇を目論んでいましたが夏の甲子園・準々決勝で三たび常葉菊川と対戦…。
しかし1-6で敗れ、三度目の正直はなりませんでした。
一方の北大津は、その年の夏に甲子園春夏連続出場を目指しましたが、夏の滋賀大会決勝で宿敵・近江に敗れて出場は叶いませんでした。
まとめ 2007年センバツ 北大津
2007年春のセンバツに出場した北大津を紹介しました。
この大会では自滅に近い形で敗退しましたが、メンバーに2年生がたくさんいたので期待しかなかったことを鮮明に思い出します。
そしてこの大会から、出場選手全員が平成生まれの選手になった事が話題になりましたね~。
それも懐かしいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた。